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社会科学分野【政治学(A)】レポート課題・返却「合格」2021.09.17着

「政治学(A)」のレポート。
「合格」評価をいただきました。初めて提出した記入式のレポート課題。
Web提出のためか、講評がない。
→ 9/21 問い合わせたところ特にコメントがない場合は、講評はないらしい。(レポートを郵送した場合も同じ)
正直、合格をいただいたのにモチベーションが上がりません。

 何にせよ、合格したレポートを公開します。
 詳しい課題内容(大学の著作権保護のため)は、お示しできませんが、レポート本文については、私が作成したものなのでお示ししますが、盗用など本レポートを悪用された場合は、法的措置も辞さない構えです。
 慶應義塾大学に問い合わせしたところ、ホームページに掲載することは「お勧めしない」とのことでしたが、今後、慶應通信に興味があり入学される方などの参考になればと思い公開しております。

レポート作成に2週間弱かかりました。提出:2021.09.01・返却:2021.09.17

あとは10月に行われる科目試験(今回は代替レポート)に向けて勉強します!

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提出レポート↓

小選挙区比例代表並立制にみる政治改革

序  章

 日本国憲法前文には、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、(中略)そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」と明記されている。これは、代表民主制を統治の基本原則であると読み取ることができる。では、統治機構における選挙制度は、有権者と政治家にどのような関係性があるのだろうか。
 本論は、「選挙制度が変われば、有権者も政治家も行動準則を変えざるを得ない。」(待鳥聡史『政治改革再考』2020年 89頁)とあるように、1980年代から議論され、選挙制度改革により生み出された「小選挙区比例代表並立制」を参考に有権者と政治家がどのような形で行動準則を変えたのかを考察する。
 そのため、現行の選挙制度である小選挙区比例代表制について近年の選挙結果を事例に挙げ、第一章では、1980年代の政治不信により、どのような議論がなされ選挙制度改革を行なったのか、その経緯について政治的背景とともに示す。また、現行の選挙制度である小選挙区比例代表並立制の導入過程と仕組みについて述べる。第二章では、小選挙区制と比例代表制を評価し、長所と短所を明確化させる。第三章では、前章で述べた短所をもとに、現行制度の問題点を把握して政治改革の課題を明らかにする。最後は、本レポートでの考察を総括する。

第一章:選挙制度改革と小選挙区比例代表並立制の導入

 まず、なぜ選挙制度改革が必要になったのか。その原因を示す。そのためには1980年代後半まで遡ることになる。
 当時、中選挙区制を導入していたが、一つの政党が過半数を得ようとすると同じ選挙区内で複数の候補者を当選させなくてはならない。しかし、所属政党は、1人の候補者のみに全面的な支援をすることができない。そのため、候補者は当選するための資源を外部に頼らなくてはならない。特に選挙資金の調達は、企業などの組織的な協力が必要となる。これが政治腐敗への始まりにつながったのではないだろうか。
 1つの事件例を挙げると、1988年6月に発覚したリクルート事件である。この事件は、リクルートコスモスの未公開株を賄賂として政治家や官僚に譲渡され、逮捕者が続出した。この贈収賄事件は、日本政治史における最大のスキャンダルであり、中選挙区制という選挙制度の問題点が露呈することとなった。
 事件の全貌が明るみに出ると、国民の怒りは頂点に達する。政治に対する不満が高まり、政治改革の必要性が政府与党はもとより、各方面で議論されるようになった。
 こうした政治的背景により、国民への信頼を回復させるため、政治改革を実施することになる。その核が選挙制度改革ではないかと考察する。実際、1988年12月、自民党総裁直属の機関として、「政治改革委員会」が発足。選挙制度についても論議がなされることになる。
 また、海部内閣時には、選挙制度審議会設置法により、「第8次選挙制度審議会」を設置。選挙制度及び政治資金制度の根本的改革のための方策について諮問された。答申内容は、中選挙区を廃止し、小選挙区比例代表並立制の導入、政治資金の規制強化が盛り込まれた。
 そして、各政党内での合意形成や国会での議論に時間が費やされ、紆余曲折はあったものの、ようやく1994年1月に「政治改革関連法案」が成立し、従来の中選挙区制から「小選挙区比例代表並立制」が導入された。この制度は、1996年の第41回衆議院議員総選挙から実施された。

第二章:小選挙区制と比例代表制の評価

 小選挙区比例代表制の導入については、前述した通りである。この制度は、1996年から現在まで行われている選挙制度であり、小選挙区制と比例代表制の二つを組み合わせて行う。その理由は、それぞれの短所を長所で補うことが可能とされているためである。
 では、この小選挙区制と比例代表制の長所と短所について考察する。
 はじめに、小選挙区制について述べる。選挙区数は289からなり、候補者名で投票する。1つの選挙区から1人の議員が選ばれるため、政党本位、政策本位の選挙運動が可能である。そのため、大政党が形成されやすく政権の安定につながりやすいが、時の政権に不満があれば、有権者は最大野党に投票し政権交代が実現する。
 また、小政党は議会に代表を送れない短所があり、1つの選挙区から1人の議員が選ばれるため、当選者以外の候補者は議席を得ることができないので、死票が多くなるのもデメリットである。さらに地方自治体単位で選挙区が決まるため、一票の格差が大きくなる。
 次に、比例代表制について述べる。
 比例代表制は、全国を11ブロックに分け、政党名で投票し各政党の得票率に応じて議席数が決定する。この得票率は、獲得した得票数を有効得票数で割った数値、いわゆるドント方式で算定される。そのため、票数に応じて議席が分配され、死票が出にくくなり、小政党が分立し政権が不安定になりやすい。また、選挙範囲が広範のため、小選挙区制より一票の格差は小さい。しかし、選挙範囲がブロック単位のため、選挙活動に多額の資金が必要となる。
 以上が、小選挙区制と比例代表制の長所と短所である。前述したように、制度上はそれぞれの長所を活かして、互いの短所を補っているように推察できる。
 しかし、小選挙区制は、選挙区が狭いため選挙費用が少額に抑えられると言われるが、政治とカネのスキャンダルは未だ消えていない。また、比例代表制で当選した国会議員が、所属政党を離党し、無所属あるいは、新党を結成し活動することがある。
 現行の制度で、選挙制度改革あるいは、政治改革の目的は果たされているだろうか。政治家自身のモラルが原因だろうと考察するが、現行制度では疑問が残り、早急に解決しなければならない課題であると言わざるを得ない。

第三章:現行制度の現状と政治改革の課題

 以上、簡単ではあるが、小選挙区と比例代表制の長所と短所について考察した。その中で、選挙制度そのものについて、問題点が浮き彫りとなった。本章では、注目すべき問題点を取り上げ、政治改革の課題を考察する。
 吉田茂は、「衆議院の選挙なども、成るべくよい機会に小選挙区に移行して、費用の節約、候補乱立の防止などに途を拓かねばなるまい。自己の個人的利害にこだわって、これが改正を阻止するなどは、誠に醜陋とすべきであろう。」(吉田茂「回想十年(下)中央公論新社 2015年 141頁)と自著に示した。
 だが、小選挙区制において費用の節約は実現できていない。もし、費用の節約がなされているのであれば、汚職事件や収賄罪、公職選挙法違反などの政治とカネのスキャンダルは起こらないだろう。また、政党の政治活動の促進、民主政治の健全な発展に寄与することを目的に「政党助成制度」が創設されている。本制度は、一定の要件を満たせば助成金が政党に交付される。しかし、後述する比例代表で当選した議員が、所属政党を離党して政党助成金目当てに、新党を結成する場合がある。
 この制度は、本来、第一章で述べた政治改革、選挙制度改革の議論が進むなかで、企業や団体などからの政党、政治団体への献金を制限する代わりに設置された新たな制度である。
 次に、比例代表制における問題点である。
 国会法により、所属政党が選挙で競合した他政党に所属することになった場合は、失職すると定められている。
 しかし、当選した議員が所属政党を離党して無所属、あるいは新党を結成し活動する場合は、失職しない。この問題については、賛否両論あり、法律の抜け穴であるとの指摘がなされている。2017年の衆議院議員総選挙においても比例代表で復活当選した議員が所属政党に離党届を提出した。国会法により、他の既存政党に入党はできないので、党籍は無所属のまま、他党の会派に所属した事例がある。
 このように、選挙制度を改革したにもかかわらず、重大な矛盾が存在する。この矛盾を取り除くことが、政治改革の要ではないだろうか。いずれにせよ、この現状が続く限り国民の政治参加は促進されない。

結   論

 選挙は民主政治の根幹である。また、街頭や演説会場で政治家自身の政策や信念を主張し支援を有権者に求めることができるため、民意を政治に反映する絶好の機会でもある。
 これまで述べたとおり、小選挙区比例代表並立制には、短所がある。国政における選挙制度として機能を果たしているとは、言い難い。それでは、この短所をどのように補うべきか。
 小選挙区比例代表並立制が導入された事由は、政治とカネの問題が発端と言えよう。しかし、公職選挙法に違反する事件は今もなお発生しており、金権体質は、是正されていない。まさしく、「選挙制度は一長一短あって、制度だけでは最善のものを見つけることはむずかしい。そこで、いかなる選挙制度を採用するにしてもその弊害を除去するような方法が同時に行わなければならない。」(中村菊男『政治学』慶應義塾大学出版会 1964年 125頁)。現行制度が導入され、30年近くが経つ。なぜ、的確な選挙制度を実現するために、継続的な議論がされないのか。このような状態であるから、政治腐敗、強いては政治の信頼が失われ、政党制にも悪影響を及ぼし無党派層の増加、低投票率が続き、悪循環に陥る。
 現行制度を今一度改革するのであれば、「そのタイプや段階がどのようなものであれ、デモクラシーが健全かどうかは、ひとえに些末な技術的細部である選挙制度にかかっている。それ以外のことはすべて二義的である。もしも選挙制度が適確で現実に即しているなら、すべてはうまくいく。そうでないなら、他のすべてが申し分なかろうと、すべて失敗する。」(オルテガ・イ・ガセット(佐々木孝訳)『大衆の反逆』 岩波書店 2020年 273頁)とあるように、政治に対する信頼を取り戻すためには、有効的な選挙制度の再構築を実現しなければならない。新制度が実現すれば、有権者の行動準則は自ずと変化するに違いない。

参考文献

岩崎美紀子『選挙と議会の比較政治学』、岩波書店、2016年。
佐々木毅『政治改革1800日の真実』、講談社、1999年。
中村勝範『主要国政治システム概論』、慶應義塾大学出版会、1999年。
中村菊男『政治学』、慶應義塾大学出版会、2019年。
待鳥聡史『政治改革再考−変貌を遂げた国家の軌跡−』、新潮社、2020年。
吉田茂『回想十年(下)』、中央公論新社、2015年。
オルテガ・イ・ガセット(佐々木孝訳)『大衆の反逆』、岩波書店、2020年。

3,961字(表題部、文献表は除く)


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