盛岡市スポーツを通じた健康づくりの推進に関する条例 視察(岩手県盛岡市②)
2025.01.22.
「盛岡広域スポーツコミッション」の説明を受けた後、引き続き「スポーツ推進条例(盛岡市スポーツを通じた健康づくりの推進に関する条例)」についてお話をお聞きしました。
○ 視察を終えての所感
この条例はいわて国体を契機に議員発議で制定されました。他自治体・議会でも議員発議により制定されている先進自治体は多く散見されます。
条例の目的・基本政策には、健康づくりや長寿など…生涯スポーツ・地域のスポーツ活動による交流、地域の活性化も含まれ重要な条文が盛り込まれています。また、制定までのプロセスはスケジュールの通りですが条文作成から可決・制定までのスピードが速い感じがします。(会派間・担当課との調整がスムーズ)
制定によりスポーツ施策を明確化させる意義があろうかと思いますし市の責務、市民・関係団体・事業者の役割もわかりやすくなるでしょう。
今後は、羽島市においても条例制定に向けて準備を進めたいと思います。盛岡市のスポーツ推進条例や他自治体の事例も参考に条文を作成します。(指導者の育成、体育施設の整備・確保、ボランティア活動、地域コミュニティの活性化等も条文に盛り込みたいと考えています。)
▶︎▶︎▶︎ 盛岡市スポーツを通じた健康づくりの推進に関する条例 本文
○ 条例制定の理由
平成28年に行われた「希望郷いわて国体」の成功を記念し、国体の遺産を引き継ぐ施策を盛岡市に導入できないものかと考えたことをきっかけに、「スポーツを通じた健康長寿社会の形成と地域活性化の実現」を目的とする施策を検討。
それぞれの部署が計画を立案し、事業を進める現状では、複数の部署にまたがる場合、この施策の実現が難しいことがわかり、部署を横断して課題を検討し、審議する機関の設置などを盛り込んだ条例を議員発議で提案したとのこと…。
○ 条例制定スケジュール
平成27年8月初当選の議員7人による二七会において、議員発議に向け条例案文を作成し、検討を進めた。
日 付 | 取り組み内容① | 取り組み内容②・担当など |
平成30年10月29日 | 会派へ条文案・発議の説明 | 盛友会 |
31日 | 担当課との情報交換 | スポーツ推進課、健康増進課 |
11月5日 | 検討会議 | スケジュール確認・条文検討 |
12日 | 会派へ条文(案)・発議の説明 | 市民クラブ |
19日 | 会派へ条文(案)・発議の説明 | 日本共産党盛岡市議団 |
19日 | 会派へ条文(案)・発議の説明 | 創盛会 |
24日 | 検討会議 | スケジュール確認、条文 検討 |
12月18日 | 担当課との情報交換 | 長寿社会課 |
平成31年1月24日 | 検討会議 | スケジュール確認 |
平成31年2月13日 | 幹事長会議 | 各会派幹事長 説明条文(案)を会派へ持ち帰り協議 |
19日 | 幹事長会議 | 各幹事長から会派での 協議結果を報告 |
3月27日 | 議会運営委員会 | 本会議への発議案提出協議 |
3月27日 | 3月定例会本会議(最終日) | 本会議場で発議案の趣旨説明 賛成全員により可決・同日施行 |
○ 質疑応答
視察前に盛岡市に提出した質問の回答一覧
Q.条例制定に向けて議会、行政の同意・賛成
A.発議案について全員が賛成。担当課とは、情報交換会を通じて議員発議条例について説明を行なっている。
Q.市民からの意見(パブリックコメントなど)
A.議会としてではなく、任意団体として進めてきた条例案であり、パブリックコメントが必要な実施機関に当たらないほか、議員がスポーツ関係団体との意見交換をするなど、一定程度の調査研究を実施済みであることからパブリックコメントは実施していない。
Q.この条例が盛岡市のスポーツ振興にもたらすものは?
A.条例をきっかけとし、スポーツを通じた健康づくりに関する施策が総合的かつ計画的に推進されることで、市民が生涯にわたりスポーツに親しみ、健康的な生活を送り、長寿を享受することができる社会の形成につながることを期待している。
Q.制定して良かったこと、悪かったことは?
A.基本施策にあるスポーツ関係団体及び市関係課の連携を促進することにつながった。一方で、当該条例に限らず、議員発議条例は制定後しばらく盛り上がるが、時間の経過により、制定意義の希薄化が進むことから、議員発議条例後の機運をどのように維持するかが課題である。
○ その他参考
平成31年3月の議員発議条例から5年が経過したことから、現在の盛岡市のスポーツなどの状況について、議会広報委員がスポーツに関わる方々へインタビューを行い、もりおか市議会だよりに特集記事としてまとめている。(詳しくは下記に記載)
○ 条例制定のその後
2024.08に発行された「もりおか市議会だより」には「条例制定のその後 盛岡のスポーツの今」と題した特集記事が掲載されました。
・以下本文より
市議会では、スポーツを通じた健康長寿社会の形成と地域活性化の実現を目的に平成31年3月に議員発議により「盛岡市スポーツを通じた健康づくりの推進に関する条例」を制定しました。条例では、市民が健康で生き生きとした暮らしを持続できる地域社会を実現するため、市の責務やスポーツ・健康づくり関連団体、事業者などのそれぞれの役割のもと、相互に協力することを定めています。そこで、条例制定から5年がたった現在の本市のスポーツなどの状況について、議会広報委員がスポーツに関わる皆さまにお話を伺いました。
・元気はなまる教室の様子
今日の健康状態をチェックし教室がスタート。今の体を維持するために、一人ひとりが「私のプラン」を作り参加することで、意欲につながり継続していく。初めての参加者もいれば通い始めて7、8年という参加者もおり、「体力を維持して岩山の散歩を続けることが目標」という人も。何より、回数に縛られず無理なく参加できることが魅力とのこと。インストラクターからは「介護予防体操は三十代四十代こそ参加してほしい」との話も。終了後の参加者からの言葉は「次回も参加する」だった。
◇取材先:元気はなまる教室参加者、インストラクター
◆元気はなまる教室「元気はなまる筋力アップ教室」の通称。老人福祉センターなどでおおむね65歳以上を対象に介護予防のための体操、レクリエーション、講話を行っている。
・部活動の地域移行
もりスポネットの役員は、「条例は役所の縦割りをなくすという方向で意義があったと思います」と話す。一方で、「部活動の地域移行については、移行がスムーズにできるほど総合型地域スポ―ツクラブが浸透している状況でもなく、持続可能なスポーツ文化の環境整備のために、学校と地域クラブとのマッチングや多世代にわたるスポーツの機会を創り出すコーディネーターなどの設置に向けた提言を行ってほしいです」とも話し、今後の市議会の役割に期待を寄せた。
◇取材先:もりスポネット
◆もりスポネット 市総合型地域クラブ連絡協議会の通称。平成28年に市内5つのクラブが中心となって設立。現在は7つのスポーツクラブが連携し、それぞれの持つ「強み」と「弱み」を共有し、補っていくことを目的としている。
・アプリを活用した健康増進
コロナ禍でスポーツイベントの開催が困難となる中、市ではアプリ「MORI-WALKER」を導入し、市民の健康づくりの機会の確保に努めた。「もりおか健康ウォーク」ではアプリ利用者へポイント付与の特典もあり、参加者からは「楽しかった」や「また参加したい」との声が。社員の健康づくりにMORI-WALKERを活用している会社も。市内のウォーキングイベントには会社全体で毎回参加しているという皆さんからは「ウォーキングの楽しさがどんどん広がってくれれば」と期待の声!
◇取材先:もりおか健康ウォークin春の海ごみゼロウィーク参加者
◆MORI-WALKER 市公式の健康づくりのアプリ。ウォーキングや体重記録などを行うと「健康ポイント」がたまり、MORIOペイポイントと交換できる。
・プロスポーツの振興
いわてグルージャ後援会会長は「幅広い年齢層に加えて女性も多く、敷居が低く家族的なところがグルージャサポーターの特徴。市外から来ている人も多く、応援でつながりができた。自分達のチームと思って気軽に応援に来てほしい」と語る。また、副会長も「多様な人々が集まる場で、友達がたくさん増えたのが一番よかった。経済効果も大きいと思う」と語った。中には、外国人選手との交流を目標に英語を頑張るという中学生も。「グルージャの存在が生きがい」と会長は笑顔を見せた。
◇取材先:いわてグルージャ後援会
◆いわてグルージャ盛岡 いわぎんスタジアムをホームスタジアムとし、県内33市町村をホームタウンとするプロサッカーチーム。令和5年からいわてグルージャ後援会が発足している。
・体育館と地域の連携
都南、飯岡および乙部、いずれの体育館でも「コロナ禍で最大20%ほど利用が落ち込んだが、5類移行後の現在は回復し、以前を上回っている」と話す。それぞれの体育館の人気も高く、都南体育館では利用団体同士の協議によって使用のバランスを取っており、飯岡体育館では利用予約のために並ぶことが多々あり、乙部体育館では当日に飛び込みの利用があると語る。各館で利用者の期待に応えられるような施設運営を行っており、体育館は地域スポーツにとって必要不可欠な施設となっている。
◇取材先:都南体育館、飯岡体育館、乙部体育館
・インタビューを終えて
議員発議により策定した条例がどのような効果をもたらしているのか追跡調査を行いました。今回、皆さまからのお話を通じて、身近な運動場所としての体育館やイベント、気軽に応援に参加できるプロスポーツの存在が、スポーツを楽しむ環境づくりに加えて、地域の活性化に寄与している様子が伺えました。一方で、部活動の地域移行のように、仕組みづくりが十分でないという声が聞こえる分野もあり、今後市議会として皆さまの声を市政に反映してまいります。